3Dプリンターに最適なPLAフィラメントとは?使用するメリット・デメリットを詳しく解説
3Dプリンターを導入する際に、初心者がよく迷ってしまうのがフィラメント選びです。「せっかく3Dプリンターを使うなら自分にぴったりの材料を使いたい!」と思いますよね。
この記事では、3Dプリンターで人気のPLAフィラメントの基本から種類、用途などを詳しく解説します。PLAフィラメントは扱いやすく安価なため、3Dプリンター初心者におすすめの材料です。記事を読めば、PLAフィラメントへの理解が深まり、3Dプリンターで楽しく作品を作れます。
PLAフィラメントとは植物由来のPLAをベースに開発された3Dプリンター用材料

PLAフィラメントは3Dプリンターで一般的に使われる材料の一つです。原材料やABSとの違いについて詳しく解説します。
3Dプリンターで使用するPLAフィラメントの原材料
3Dプリンターで使われるPLAフィラメントの主な原材料は、植物由来のポリ乳酸(PLA)という樹脂です。ポリ乳酸はトウモロコシやサトウキビといった植物に含まれるデンプンを元に作られます。
» 大阪大学「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」(外部サイト)
高温多湿のコンポスト環境などの特定条件下で微生物によって水と二酸化炭素に分解可能です。PLAは環境に優しいバイオマスプラスチックとして知られています。
PLAフィラメントの構成は以下のとおりです。
- ポリ乳酸(PLA)樹脂
- 顔料
- 添加剤
植物由来のデンプンを発酵させて乳酸を生成してポリ乳酸(PLA)樹脂を製造します。目的に応じて色や性質を調整するための顔料や添加剤を加えたものがPLAフィラメントです。身近な植物がものづくりのための便利な材料に生まれ変わっています。
PLAとABSの違いは原材料と強度
3Dプリンターでよく使われる材料としてPLAの他にABSという樹脂があります。それぞれの性質が大きく異なるため、作りたいものや使う環境によって使い分けてください。
PLAとABSの主な違いは以下のとおりです。
| PLA | ABS | |
|---|---|---|
| 原材料 | トウモロコシなどの植物由来 | 石油由来 |
| 扱いやすさ | 造形中に変形しにくく反りが少ない | 反りやすく難易度が高い |
| 強度 | 硬いが衝撃には弱い | 粘りがあり衝撃に強い |
| 耐熱温度 | 約60℃ | 約100℃ |
| 後加工のしやすさ | やや難しい | 加工しやすい |
それぞれの特徴を理解して造形の目的や用途に合った材料を選ぶことが、3Dプリンターでのものづくり成功の鍵です。
» 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所「触察立体教材作成の観点からみた3Dプリンター」(外部サイト)
3DプリンターでPLAフィラメントを使用するメリット3選

3DプリンターでPLAフィラメントを使用するメリットは以下のとおりです。
- 植物由来の原材料でPLAは環境に優しい
- 3Dプリンター初心者でも扱いやすい
- 3Dプリンターで使用すると安価でコスパが高い
植物由来の原材料でPLAは環境に優しい
PLAフィラメントが環境に優しい最大の理由は原材料が植物由来である点にあります。石油から作られる一般的なプラスチックとは違い、再生可能な資源から作られています。
PLAの環境への優しさは以下のとおりです。
- トウモロコシやトウキビといった植物を原材料にしている
- 特別な環境下で微生物によって分解され自然に還る
- ABSなどの石油由来のプラスチックに比べ、作る際のエネルギーが少ない
- 造形するときの嫌な匂いが少なく室内で使いやすい
PLAフィラメントは環境に配慮しながら、3Dプリンターを楽しみたい方に最適な材料です。
3Dプリンター初心者でも扱いやすい

PLAフィラメントは3Dプリンターを初めて使う方でも扱いやすい材料です。造形に失敗する原因となる「反り」や「割れ」が起こりにくいからです。
PLAフィラメントには以下の特徴があります。
- 熱による変形が少ない
- 低い温度で溶ける
- 嫌な臭いが少ない
PLAフィラメントは造形の失敗が少なく、初めての方でも安定した品質で作れます。3Dプリンターを始めるなら、PLAフィラメントから試してみてください。
3Dプリンターで使用するとコスパが高い
PLAフィラメントはコストパフォーマンスが高い材料です。以下のコストが抑えられるので、3Dプリンターを使ったものづくりにかかる総費用を低くできます。
- 材料費
- 電気代
- 材料ロス
- 初期投資
PLAフィラメントは他の材料と比べて価格が安く設定されています。低い温度で造形でき、3Dプリンターのベッドを温める機能も必須ではないため消費電力の節約が可能です。
PLAフィラメントは造形が安定しやすいので、失敗による材料の無駄を減らせます。材料の購入費用から運用コストまで総合的に見て経済的です。趣味からビジネスまで幅広い用途で安心して使用できます。
3DプリンターでPLAフィラメントを使用するデメリット3選

3DプリンターでPLAフィラメントを使用するデメリットは以下のとおりです。
- 耐熱性が低い
- 耐衝撃性が低く脆い
- 後加工が難しい
耐熱性が低い
PLAフィラメントの大きなデメリットは熱に弱い点です。約60℃で柔らかくなり始めるので、日常生活での温度でも3Dプリンターで作ったものが変形する可能性があります。
以下の状況で変形や歪み、溶けが生じる恐れがあります。
- 夏場の車内や直射日光が当たる場所での放置
- 熱湯をかける
- 食器洗い乾燥機での洗浄
- 長期間の屋外での使用
- 熱を発する電子機器の部品として使用
3Dプリンターで作ったものを置く場所や使い方には注意が必要です。耐熱性が必要な場合はPLAフィラメントは向いていません。高温環境で使う部品を作る際は、ABSやPETGなどの熱に強い材料を選びましょう。
耐衝撃性が低く脆い

PLAフィラメントは硬い一方で衝撃に弱く脆いデメリットがあります。PLAは柔軟性に乏しく、曲げようとしても粘りがないため折れてしまう性質がある材料です。落下などの衝撃が加わるとひび割れたり壊れたりしやすいです。
» 日本学術振興会「三次元プリンターで造形する線量計材料製ファントムの開発」(外部サイト)
PLAフィラメントの場合、以下の強い力や衝撃がかかるものには向いていません。
- 頻繁に動かす機械の部品
- ハンマーやレンチなどの工具
- ネジを強く締め付ける必要がある箇所
3Dプリンターで作ったものにかかる力をあらかじめ想定して、用途に応じた材料を選びましょう。
後加工が難しい
PLAフィラメントは3Dプリンターで造形した後の加工が難しい側面があります。PLAは粘り気がなく脆い特徴を持っているためです。摩擦熱にも弱く、薬品による表面処理もABSなどと異なります。PLAの造形物をきれいに仕上げるための選択肢は限られています。
PLAは手作業でのヤスリがけは時間がかかるうえにきれいに仕上がりにくい点も特徴です。摩擦熱に弱く、電動工具で磨くと表面が溶けてしまう場合があります。脆い性質上、PLAはドリルやカッターによる加工はひび割れや欠けが起きやすい傾向があります。
PLAは塗料がのりにくく、きれいに塗装するにはプライマーという下地剤を塗る作業が必要です。さまざまな理由からPLAの造形物は後から手を加えるよりも、造形した状態で使う方が良いと言えます。
PLAフィラメントの種類と特徴

3Dプリンターで使える以下のPLAフィラメントについて詳しく解説します。
- PLAマットフィラメント
- PLAシルクフィラメント
- PLA木質フィラメント
【PLAマットフィラメント】光沢を抑えた高級感のある仕上がり
PLAマットフィラメントの造形物は表面の光沢を抑えたマットな質感が特徴です。光の反射が少ないので高級感や重厚感を演出できます。3Dプリンターで造形時にできる積層痕が目立ちにくく、後加工をしなくても滑らかで美しい仕上がりになります。
PLAマットフィラメントが適している造形物は以下のとおりです。
- 建築模型
- フィギュア
- アート作品
- デザイン性の高いガジェット
PLAマットフィラメントは写真撮影の際も光が乱反射しにくいので、製品の形や細かい部分が正確に伝わります。
【PLAシルクフィラメント】強い光沢と滑らかな表面

PLAシルクフィラメントの造形物は、絹のような強い光沢と触り心地の良い滑らかな表面が特徴です。原料に特殊な添加剤を配合しているため独特の美しい光沢が生まれます。光をきれいに反射するので3Dプリンターの積層痕が目立ちにくく、高級感のある仕上がりになります。
PLAシルクフィラメントの特徴を生かして、見た目の美しさが求められる以下の造形におすすめです。
- フィギュアやキャラクターの置物
- 記念のトロフィーやメダル
- アクセサリー
- 室内の装飾品
- デザイン性を重視した試作品
通常のPLAフィラメントに比べて、層と層がくっつく力が少し弱いことがあります。3Dプリンターできれいに造形するにはノズルの温度を少し高めに設定してください。
【PLA木質フィラメント】木粉入りで木の質感や香りを再現
PLA木質フィラメントは、PLAに本物の木粉を混ぜ込んで作られた特別な材料です。3Dプリンターの造形物から木の香りがして、見た目や手触りも本物の木材に近い質感を再現できます。
PLA木質フィラメントは木粉を含んでいるため、木工品のような温かみのある造形物が作れます。ヤスリがけや塗装、木材用ステインでの着色も簡単に行えるので、オリジナリティあふれる作品づくりが可能です。
PLA木質フィラメントの特性を生かせば、デザイン性を重視する以下の造形物を作れます。
- 建築模型
- 家具のミニチュア
- 木彫り風の装飾品
3Dプリンターで造形する温度を変えると、色の濃淡が変化するので木目のような表現も可能です。木粉がノズルに詰まりやすいので通常より少し太いノズル(0.5mm以上)の使用がおすすめです。
3DプリンターにおけるPLAフィラメントの用途

PLAフィラメントは扱いやすさと手頃な価格により、幅広い用途で活用されています。PLAフィラメントの以下の用途について詳しく解説します。
- 試作品およびモックアップ
- 玩具や教育用ツール
- 装飾品やデザインパーツ
試作品およびモックアップ
PLAフィラメントは製品開発に不可欠な試作品やモックアップの製作に適しています。3Dプリンターによって低いコストで素早くアイデアを形にできるからです。開発の初期段階では何度も試作を繰り返してデザインや機能性を確かめる作業が欠かせません。
PLAフィラメントは以下の目的で活用すると大きな効果を発揮します。
- 外観モデルの製作
- 組み立てやすさの確認
- 干渉の確認
- 実物大の模型製作
- アイデアの具現化
- 改善点の検討
3DプリンターでPLAフィラメントを使えば開発の時間と費用を大幅に削減できるうえに、試作を通じて設計の完成度を高められます。
» 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所「触察立体教材作成の観点からみた3Dプリンター」(外部サイト)
玩具や教育用ツール

PLAフィラメントは子ども向けの玩具や教育ツールの製作に適しており、難しい内容をわかりやすく伝える教材づくりにも最適です。植物由来の成分なので安全性が高く、学校などで多くの生徒が使う教材として導入しやすい点も特徴です。
豊富な色を生かせば、オリジナルフィギュアやキャラクター、組み立てて遊べるブロックといった玩具を作れます。
PLAフィラメントは以下の学術模型の製作に活用されています。
- 生物のDNAモデル
- 地理で使う地形の模型
- 数学で学ぶ立体図形
生徒自身が設計から造形までを体験すれば、STEM教育のように科学技術やデザインを学ぶきっかけにもなります。
装飾品やデザインパーツ
PLAフィラメントは装飾品やデザインパーツの製作に最適です。PLAは細かい部分の造形が得意で色のバリエーションも多いため、自分だけのオリジナルアイテムを自由に作れます。
PLAフィラメントを使って、3Dプリンターで以下のものを制作できます。
- 置物やキャラクターフィギュア、ミニチュアなどのホビー用品
- 花瓶やランプシェード、小物入れなどのインテリア雑貨
- イヤリングやペンダントトップといったオリジナルアクセサリー
- スマートフォンケースやキーキャップなどのカスタムパーツ
- コスプレ用の衣装パーツや小道具
- 建築模型やジオラマに使う精密な部品
3DプリンターでPLAフィラメントを使えば、アイデア次第でさまざまな形にできる点が魅力です。PLAフィラメントは自分だけの特別な一品を作りたい場合に役立ちます。
3Dプリンター使用時のPLAフィラメントの取り扱い方3選

3Dプリンター使用時のPLAフィラメントの取り扱い方を以下の項目で詳しく解説します。
- 乾燥剤と一緒に密閉容器で保管する
- ノズル温度は高くしすぎない
- 食品に直接触れる用途には使用しない
乾燥剤と一緒に密閉容器で保管する
PLAフィラメントは使わないときは乾燥剤と一緒に密閉容器で保管してください。PLAフィラメントは空気中の水分を吸いやすい性質があるからです。湿気を含んだフィラメントを3Dプリンターで造形すると、造形物の表面が荒れたり糸引きが増えたりと品質が落ちてしまいます。
3Dプリンターのノズル詰まりや完成した造形物の強度が弱くなる原因にもなります。PLAフィラメントを保管する際は専用の防湿ボックスや密閉性の高いプラスチックケース、ジップロック付きの袋などに入れてください。容器の中にはフィラメント購入時に付属しているシリカゲルなどの乾燥剤を必ず一緒に入れます。
湿度計付きの保管ボックスを利用すると、容器内の湿度を管理しやすくフィラメントの品質を最適に保てます。
ノズル温度は高くしすぎない

3Dプリンターのノズル温度を高く設定しすぎるときれいな造形物を作れません。材料を溶かすための温度設定は必要ですが、高すぎると品質を落とす原因になります。
3Dプリンターのノズル温度が高すぎると以下の問題が起こりやすくなります。
- 焦げ付き・詰まり
- 糸引き
- 表面の荒れ
- 垂れ下がり・形状崩れ
- 寸法精度の低下
造形の失敗を防ぐためにも材料メーカー推奨の温度範囲を守ることが大切です。小さなものでテスト造形を行い、お使いの3Dプリンターに適した温度を見つけることをおすすめします。
食品に直接触れる用途には使用しない
3DプリンターでPLAフィラメントを使って造形したものは食品に直接触れる用途には使用しないでください。衛生面と安全性の観点から、健康に悪影響を与える危険があるからです。
造形物には3Dプリンター特有の目に見えない細かな溝(積層痕)ができます。積層痕に食べ物のカスが詰まると、完全に洗い流せず、雑菌が繁殖する可能性があります。他にもフィラメントに含まれる着色料や添加物が食品に触れても安全とは限りません。
3DプリンターでPLAフィラメントを使って造形したものを食器やカトラリーとしての使用は避けてください。安全に利用するには食品衛生法に対応したコーティング剤で表面を覆うなどの特別な処理が必要です。
3Dプリンターで自作するならPLAフィラメントを使おう!

3Dプリンターでものづくりを始める際はPLAフィラメントがおすすめです。初心者でも扱いやすく、安全性が高いうえにコストまで抑えられます。PLAは耐熱性や衝撃に弱い面には注意が必要です。植物由来で造形時のにおいが少なく、色や質感の種類が豊富でデザインの幅が広がります。
趣味のDIYから本格的な試作品づくりまで幅広い場面で役立ちます。