
【実例あり】3Dプリンターの置き場所に最適な条件と設置する前の注意点を解説
3Dプリンターを導入する際は事前に置き場所を決めておく必要があります。3Dプリンターは適切な環境に設置しないと、本来の性能を発揮できず思わぬトラブルの原因にもなります。この記事では3Dプリンターの最適な置き場所を選ぶ際のポイントや具体的な設置例を解説します。
置き場所は、水平で安定しており、温度・湿度管理や換気がしやすい環境が理想です。この記事を読めば3Dプリンターの置き場所がわかるだけでなく、設置後も安心して長く利用できます。
3Dプリンターの置き場所を選ぶ前の確認事項
3Dプリンターを設置する前に、次の2点を確認しておきましょう。
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本体サイズ・重量の確認
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電源や配線位置の確認
これらの確認を怠ると、設置後にトラブルや動作不良が発生する可能性があります。
本体サイズ・重量の確認
3Dプリンターのサイズや重量によっては、設置したい場所に収まらなかったり、重さに耐えきれなかったりする恐れがあります。製品の説明書や公式サイトで、本体の幅・奥行き・高さを確認しましょう。メーカーが指定する安全クリアランス(背面・側面の必要空間)も把握しておくと安心です。
設置予定の机や棚、床のスペースをメジャーで測り、3Dプリンターがきちんと収まるか確認します。本体の重さも忘れずにチェックし、設置場所がその重量に耐えられるかも確認してください。材料交換やメンテナンスがしやすいよう、本体周囲に十分なスペースを確保できるかも検討しましょう。
また、大型で重量のある3Dプリンターを導入する場合は、搬入経路の確認も忘れずに行いましょう。
電源や配線の位置を確認する
3Dプリンターの置き場所を決める際は、電源や配線の位置も事前に把握しておくことが重要です。適切に設置しないと、3Dプリンターの故障や事故を引き起こす恐れがあります。以下のような電源周りの条件を確認しておきましょう。
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電源ケーブルがコンセントまで届くか確認する
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延長コードや電源タップの使用を避ける
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接地対応(アース付き)のコンセントを使用する
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ブレーカーの容量を超えないか確認する
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配線が可動部や熱源に接触しないようにする
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配線が通路を妨げないようにする
3Dプリンターの電源ケーブルがコンセントに届かない場合は、延長コードの使用ではなく、設置場所の変更を検討し、必要に応じてメーカーに相談してください。
やむを得ず延長コードなどを使用する場合は、UL・CE・PSEなどの認証を取得した、定格容量1500W以上の製品を選ぶようにしましょう。
また、配線はしっかり固定し、床に垂れたり這わせたりしない工夫をすることで、転倒や断線といったトラブルを防ぐことができます。
3Dプリンターの置き場所に必要な7つの条件
3Dプリンターの性能を最大限に引き出すためには、以下の条件を満たした置き場所を選ぶことが大切です。
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水平な設置面がある場所
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安定した場所
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湿度が低い環境
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換気がしやすい環境
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直射日光が当たらない場所
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騒音が気にならない環境
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十分な作業スペースがある
水平な設置面がある場所
3Dプリンターを置く際は、できるだけ水平な場所を選びましょう。水平でない場所に設置すると、造形物がゆがんだり、きれいに仕上がらなかったりすることがあります。また、プリンター本体の駆動部に偏った負荷がかかり続けることで、部品の摩耗や故障の原因になる場合もあります。
近年のモデルには自動レベリング機能を備えた機種もありますが、機能がない場合は特に注意が必要です。レベリング機能がある場合でも、設置面が水平であれば、より安定した高品質な造形が可能になります。設置前には必ず水平かどうかを確認しましょう。
安定している場所
3Dプリンターは、しっかりと安定した場所に設置しましょう。本体が揺れたり、周囲からのわずかな振動が伝わったりすると、造形物がゆがんだり、表面が乱れたりして、きれいに仕上がらないことがあります。以下のような条件を満たす場所が、3Dプリンターの設置に適しています。
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動いたり傾いたりしない安定した台
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振動が伝わりにくい静かな場所(例:人の往来やドアの近くを避ける)
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プリンターの重さに十分耐えられる台や机
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地震時でも倒れにくい構造の場所や設置方法
正確で美しい造形を実現するためにも、揺れや振動のない環境を整えておくことが重要です。
湿度が低い環境
3Dプリンターは、湿度の低い乾燥した環境で使用するのが理想的です。湿度が高いと、空気中の水分がフィラメントやプリンター本体に悪影響を及ぼす可能性があります。
フィラメントが湿気を吸うと、完成品の強度が低下したり、表面に気泡が出たり、ノズルが詰まったりすることがあります。
また、湿気は3Dプリンター本体の金属部分を錆びさせたり、内部の電子部品の故障を引き起こしたりする原因にもなります。そのため、設置場所の湿度管理も非常に重要です。
設置する部屋の湿度は55〜65%程度を目安に保ちましょう。除湿機やエアコンのドライ機能を活用するとよいでしょう。フィラメントは乾燥剤を入れた密閉容器に保管するのがおすすめです。
» 公益社団法人日本印刷技術協会「印刷工場内の温湿度を管理してトラブル防止へ」(外部サイト)
換気性が良い環境
3Dプリンターの置き場所は、十分な換気ができる環境であることが重要です。
FFF方式の場合フィラメントを加熱して溶かす過程で、3Dプリンターは揮発性有機化合物(VOC)や超微細粒子(UFP)などの目に見えない有害物質を空気中に放出します。
これらを吸い込むことで、頭痛や呼吸器系への負担など、健康被害を引き起こす恐れがあります。作業環境の空気を清潔に保つため、換気対策として以下のような方法を実践しましょう。
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窓を開ける
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換気扇を回す
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排気システムを導入する
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定期的に換気する
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密閉空間を避ける
ABSやASAなどのフィラメントは特有の臭いや揮発性物質を放出しやすいため、十分な換気が欠かせません。比較的安全とされるPLAフィラメントであっても、微量の粒子が発生するリスクが指摘されています。
そのため、3Dプリンターは空気がこもらない、換気の良い場所で使用するようにしましょう。
直射日光が当たらない
3Dプリンターは、直射日光の当たらない場所に設置することが重要です。直射日光に含まれる紫外線や熱は、材料の劣化を引き起こす原因となります。また、熱によって造形テーブルの温度が不安定になると、造形物が反ったり、造形テーブルから剥がれたりすることがあります。
さらに、直射日光により3Dプリンター内部の温度が過度に上昇すると、電子部品の故障や冷却システムへの負荷増加を引き起こす可能性もあります。光を使って固めるタイプの3Dプリンターの場合は、日光によって材料が意図せず硬化してしまうリスクもあるため、特に注意が必要です。
3Dプリンターは、日差しの入らない室内の奥まった場所や、遮光対策を施した空間への設置をおすすめします。
静音性を確保できる
3Dプリンターは動作中に、音や振動を発生させます。騒音トラブルを避けるために、以下の工夫で静かな環境を整えましょう。
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寝室やリビングから離れた場所に設置する
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音が響きにくい場所を選ぶ
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防振マットやゴム足・防振脚座を設置する
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専用カバー(エンクロージャー)を使用する
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静音設計の3Dプリンターを選ぶ
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静音ファンなどの部品に交換する
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定期的に清掃や注油を行う
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早朝や深夜の使用を避ける
これらの工夫によって、3Dプリンターの動作音を気にせず、快適な作業環境を維持できます。静音性を確保することは、ストレスなくものづくりを続けるための大切なポイントです。
作業スペースの確保
3Dプリンターを快適に使用するためには、本体を置く場所に加え、十分な作業スペースも必要です。操作や材料の交換、メンテナンスを行うためのスペースを確保しましょう。また、完成品を一時的に置く場所や、材料・工具の保管スペース、後加工を行う作業台なども欠かせません。
あらかじめ作業スペースを確保しておくことで、3Dプリンターをスムーズかつ安全に運用できます。
3Dプリンターの置き場所の実例3選
3Dプリンターの設置場所として、代表的な3つの例を紹介します。
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ホームオフィス
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ガレージ
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専用作業部屋
ホームオフィスでの3Dプリンター設置例
ホームオフィスに3Dプリンターを置く場合は、安定した作業机の隅や、追加の小さなテーブルを活用するのがよいでしょう。車輪付きの台車(ワゴン)に載せて移動できるようにするのもおすすめです。
棚に設置する場合は、プリンターの重量や動作時の振動に耐えられる、しっかりとしたスチールラックなどを選びましょう。振動対策として防振マットを敷いたり、耐荷重のある金属ラックを使ったりするのも効果的です。
また、使用しないときにはカバーをかけてホコリの侵入を防ぐことで、ホームオフィス全体を清潔に保つことができます。
ガレージでの3Dプリンター設置例
ガレージは、大型の3Dプリンターや複数台を並べて使用するのに適した環境です。適切な断熱処理と安定した設置台を確保することで、作業中に発生する音や材料の臭いによる影響を軽減できます。ガレージは換気がしやすい構造になっていることも多く、ABSやレジンなどの樹脂系材料を使用する場合でも、より安全で快適な作業環境を整えやすいのが特徴です。
また、工具や材料、完成した造形物などの保管スペースを確保しやすい点も、ガレージの大きなメリットです。床がコンクリートでできていることが多く、振動に強く安定した設置が可能です。
設置時は、排水用の傾斜や床の傾きに注意し、水平器を使って正しくバランスを取るようにしましょう。
専用作業部屋での3Dプリンター設置例
本格的に3Dプリンターを活用する場合は、自宅の一室を専用の作業部屋として整備しているケースもあります。専用作業部屋では、防音処理や換気システムを導入することで、騒音や臭いの問題も軽減できます。
パソコンや洗浄機などを使うことが多いため、ブレーカーの容量やコンセントの数には注意が必要です。火災対策として、消火器や一酸化炭素警報器の設置を検討してもよいでしょう。
明るさを調節できるLED照明や、手元を照らす作業灯を導入すれば、より快適に作業できるようになります。また、床材にはPタイルや長尺シートなどを選ぶことで、掃除やメンテナンスも容易になります。
3Dプリンターの置き場所に関するトラブルと解決策
使用時の振動や騒音が発生する
3Dプリンターを不安定な場所に設置すると、動作時に振動や騒音が発生することがあります。主な原因は、内部のモーターや冷却ファンなどの駆動部です。これらの問題を軽減するには、以下のような対策が有効です。
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防振マットや防音カバーを使用する
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安定した設置台の上に置く
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壁との適切な距離を保つ
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印刷速度を抑える
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ネジの締め直しや注油など、定期的なメンテナンスを行う
適切な対策を施すことで、振動や騒音を抑え、より快適に3Dプリンターを使用できます。
プリントの品質が悪化する
プリントの品質が不安定な場合、設置環境が原因であることも少なくありません。以下のような要因が品質低下につながります。
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振動が大きい:積層ズレが発生する
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湿気が多い:フィラメントが吸湿して品質が落ちる
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ほこりやゴミが多い:ノズル詰まりや表面に異物が付着する
また、エアコンの風や外気が直接当たると、造形中の温度が不安定になり、反りや剥がれの原因になります。プリント品質を安定させるには、温度・湿度を一定に保ち、外部からの風を避けられる環境に設置することが重要です。
あわせて、フィラメントの保管状態やプリンター本体のメンテナンスも、仕上がりに大きく影響します。
3Dプリンターの置き場所に関するよくある質問
3Dプリンターの置き場所に関するよくある疑問にお答えします。
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3Dプリンターの置き場所がないときの対策は?
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賃貸マンションに置くときの注意点は?
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小型の3Dプリンターでも換気は必要?
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3Dプリンターを置く棚をDIYしても大丈夫?
3Dプリンターの置き場所がないときの対策は?
設置スペースが限られている場合でも、工夫次第で快適な作業環境を整えることができます。以下のような方法を試してみましょう。
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これから購入する場合は、小型の3Dプリンターを選ぶ
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ラックを使って縦方向の空間を有効活用する
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キャスター付きの可動式作業台や棚を導入する
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デッドスペース(家具のすき間や部屋の隅など)を活用する
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ガレージやサービスルームなど、室内以外のスペースを活用する
また、作業動線を意識して配置することで、3Dプリンターの使い勝手も大きく向上します。使用しないときはカバーをかけることで、生活空間の見た目を損ねずに設置できます。
3Dプリンターを賃貸マンションに置くときの注意点は?
賃貸マンションに3Dプリンターを置くときの注意点は?
賃貸マンションで3Dプリンターを使う際は、契約内容や近隣への配慮を怠るとトラブルにつながるおそれがあります。
騒音・振動・臭い、壁や床への加工などに関する条項を、賃貸契約書で必ず確認してください。
管理会社や大家さんに事前に相談し、設置の許可を得ておくと安心です。
3Dプリンターの動作音や振動が隣や下の階に伝わらないよう、防振マットを敷くのが効果的です。3Dプリンターを覆うエンクロージャー(防音カバー)を使用するのもおすすめです。さらに、床に厚手のカーペットを敷いたり、専用の台を使用したりすることで振動を抑えられます。
万が一の火災に備えて、火災報知器の設置状況を確認し、小型の消火器を備えておくと安心です。また、退去時に部屋を原状回復できるよう、壁や床を傷つけない設置方法を心がけましょう。近隣への配慮として、早朝や深夜の使用は控えてください。
小型の3Dプリンターでも換気は必要?
小型の3Dプリンターであっても、換気は必要です。材料を熱で溶かして成形する過程で、目に見えない微粒子や有害なガスが発生します。サイズが小さくても、基本的な仕組みは変わりません。
換気が不十分な状態で使用を続けると、頭痛や吐き気に加え、目や喉、鼻への刺激を感じることがあります。
快適で安全な作業環境を保つために、換気扇や空気清浄機を活用し、こまめな換気を心がけましょう。
3Dプリンターを置く棚をDIYしても大丈夫?
3Dプリンターを置く棚は、自作することも可能です。設置場所や機種に合わせて自由に設計できますが、安全性を最優先に、次の点に注意して設計しましょう。
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プリンターの重量に耐えられる十分な強度
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振動を抑える構造
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高温部品に対する熱対策
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換気が確保された設計
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耐熱性・防火性のある素材を使用
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火災検知器の設置や確認
3Dプリンターは置き場所で仕上がりが変わる!
3Dプリンターを適切な場所に設置することで、造形品質が安定し、トラブルも起こりにくくなります。置き場所を選ぶ際は、本体のサイズや重量、電源の位置などを踏まえて検討しましょう。
水平で安定していて、湿気が少なく風通しの良い場所、直射日光の当たらない場所に設置することも重要なポイントです。
さらに、騒音への配慮や十分な作業スペースの確保も、快適な使用には欠かせません。置き場所に困った場合でも、小型機種の検討や棚の工夫によって対応することが可能です。
この記事で紹介したポイントを参考に、快適で安全な3Dプリンター環境を整えてみてください。