
3Dプリンターの使い方を分かりやすく解説|主な素材と活用例も紹介!
造形物の製作に便利な3Dプリンターですが、使い方や必要なものがよくわからず悩んでいませんか?3Dプリンターを効率的に使うためには、正しい操作手順や目的に合った素材選びが重要です。この記事では3Dプリンターの準備や基本的な使い方、主に使用する素材を解説します。
記事を読めば、3Dプリンターの導入に関する不安が解消され、購入後すぐに造形を開始できます。基本的な使い方を把握して、3Dプリンターでアイデアを形にしましょう。
3Dプリンターを使うために必要なもの
3Dプリンターを使うためには、以下の道具やソフトが必要です。
- パソコンと3Dデザインソフト
- 3Dプリンター本体
- スライサーソフト
- 造形材料
パソコンと3Dデザインソフト
3Dプリンターを使うには、パソコンと自作または入手した3Dデータが必要です。BlenderやFusion 360など一部の3Dモデリングソフトを使用する場合は高い処理能力が求められるため、パソコンを選ぶ際にはCPUやメモリ、グラフィックボードの性能も重要になります。
3Dプリンターで使用される主な3Dデザインソフトは以下のとおりです。
- Tinkercad(ティンカーキャド):無料
- Blender(ブレンダー):無料
- Autodesk Fusion(フュージョン):商用利用は有料
Tinkercadは初心者でも簡単に使えます。Blenderは機能が多いため、本格的なデザインが可能です。Fusion360は高度な設計に対応しています。3Dデザインソフトには複数の種類があるので、自分のレベルや作りたいものに合わせて選びましょう。
3Dプリンター本体
3Dプリンター本体を選ぶときに考慮すべき最初のポイントは、造形方法です。造形方法には熱でプラスチックを溶かして積み重ねるタイプや、光を当てて液体を固めるタイプなどがあります。3Dプリンターによって作れる最大のサイズが決まっているため、作りたいものの大きさに合うか確認してください。
初心者には、自動レベリング機能や、材料切れを知らせる機能などがある3Dプリンターが便利です。数万円で買える入門向けの機種から高価で高性能な機種まで、3Dプリンターの種類はさまざまです。
スライサーソフト
スライサーソフトは、3Dモデルを3Dプリンターで出力できる形式に変換するために必要なソフトです。パソコンで作った設計図(3Dモデルデータ)を、造形用のデータに変更する役割をスライサーソフトが担っています。スライサーソフトを使用すると以下を設定できます。
- 積層ピッチ(一層ごとの厚さ)
- 印刷するスピード
- ノズルや印刷台の温度設定
スライサーソフトの設定は立体物の強度や仕上がりの美しさ、完成までにかかる時間に大きく影響します。
無料で使えるスライサーソフトには、Ultimaker Cura、PrusaSlicer、Bambu Studioなどがあります。スライサーソフトを選ぶ際は、お使いの3Dプリンターに対応しているかを必ず確認しましょう。
造形材料
3Dプリンターで立体物を作るためには、造形材料が必要です。造形材料は、作りたいものの硬さや色、耐熱性などに合わせて選びましょう。家庭用3Dプリンターで主に使用される造形材料には、フィラメントとレジンがあります。
フィラメントは糸状の樹脂で、熱で溶かして積み重ねるタイプの3Dプリンターで使用されます。レジンは液体状の樹脂で、光を当てて硬化させるタイプの3Dプリンターで使われます。
3Dプリンターの基本的な使い方
3Dプリンターの基本的な使い方の手順は、以下のとおりです。
- 3Dモデリングソフトで設計データを作成する
- 作成したデータをSTLや3mfなどの形式でエクスポートし、スライサーソフトに読み込ませる
- 材料をセットする
- プリントを実行する
- 完了後にサポート材除去や表面処理をする
3Dモデリングソフトで設計データを作成する
3Dプリンターを使う前に、パソコンの3Dモデリングソフトを使用して設計データを作成します。3Dモデリングソフト上で点や線、面などを組み合わせて、立体的な形状を設計します。3Dモデリングソフトを使用するときは、立体物の大きさや角度を設計データ上で正確に決めることが重要です。
3Dプリンターの設計データは自分ですべて作成する必要はありません。インターネットで他の人が公開している設計データがあるので、自作するのが難しいという方は、ダウンロードして使用しましょう。
» 首相官邸「3Dプリンティングによるものづくり革新と知財制度」(外部サイト)
作ったデータをスライサーソフトに対応した形式で保存

3Dモデリングソフトで作成したデータは、STLファイルや3MFファイルなどスライサーソフトに対応した形式で保存する必要があります。
スライサーソフトを使用するときはファイルを読み込み、印刷方法を設定します。印刷の設定項目は以下のとおりです。
- 積層ピッチ:層が薄いほど表面が滑らかで精密に仕上がる
- 充填率:高いほど密度が増えて丈夫になる
- ノズルや印刷台の温度:材料に合わせて適切な温度を選択する
- 印刷速度:強度や見た目の滑らかさ、印刷時間に影響する
積層ピッチは一層ごとの厚さを示し、層が薄いほど時間がかかります。設定が終わったら、スライス操作をすると設定にもとづいたデータが自動生成されます。
材料をセットする
使用する造形材料を3Dプリンターにセットします。材料は3Dプリンター本体に直接セットするか、外部ホルダーからチューブを通して供給する方式があります。3Dプリンターのノズル先端に残った材料が詰まっていないか確認しましょう。
印刷台のほこりやゴミを取り除いて清掃することで、最初の層がしっかりと定着し、印刷ミスを防げます。
プリントを実行する
印刷を行うには作成したファイルをSDカードやUSBメモリ、Wi-Fiなどで3Dプリンター本体に転送します。ファイルを転送したら、使用する材料に合わせてノズルや印刷台を温めます。予熱温度は使用する材料によって異なるので、説明書や素材の情報を参考に設定しましょう。
予熱が完了したら印刷を開始します。3Dプリンターの印刷が始まったら、最初の層がしっかりと印刷台に密着しているかを確認してください。印刷途中でも、フィラメントの残量や3Dプリンターのノズル詰まりなどをチェックします。
完了後にサポート材除去や表面処理をする
3Dプリンターの印刷が終わったら、以下の仕上げ作業が必要です。
- サポート材の除去
- 表面処理
- 接着
- 塗装
- コーティング
- 特殊仕上げ
3Dプリンターで作ったものを支えているサポート材は、ニッパーやペンチなどで取り除きます。造形物の表面に残った積層の段差や線は、やすりなどで滑らかに仕上げましょう。部品ごとに作成した場合は、接着剤で接合します。造形物は塗装で見た目を良くしたり、コーティングで丈夫にしたりできます。
3Dプリンターで使われる主な素材
3Dプリンターで使われる主な素材は、以下のとおりです。
- PLA
- ABS
- その他の素材
PLA
PLAは扱いやすく、価格も手頃なため、家庭用3Dプリンターで最も一般的に使われている素材の一つです。PLAの原料は、トウモロコシやサトウキビなどの植物でんぷんから作られた乳酸です。フィギュアや模型、小物、教育用のモデルなどを作る際にはPLAが最適です。
PLAで作成したものには硬さと適度な強度がありますが、衝撃には強くありません。PLAは60℃程度で柔らかくなるため、造形物を保管する際は熱い場所へ置かないように注意が必要です。
PLAは吸湿性が高い特性があるため、使わないときは湿気を避けて保管してください。反りが少なくきれいな造形が可能なため、日用品や装飾用の小物など、気軽に使えるアイテムの製作におすすめです。
» 環境省「<脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業>」(外部サイト)
ABS
ABSは耐久性や耐衝撃性に優れ、接着や塗装などの加工もしやすいのが特徴です。
自動車部品や家電の外装、雑貨、おもちゃの製作にもABSが活用されています。
ABSは印刷中に収縮しやすく、反りやすい素材です。密閉型の3Dプリンターを使用したり、ヒートベッドや庫内の温度を高く保つことで反りを防ぎやすくなります。
また、ABSの印刷中はにおいが発生するため、必ず換気してください。PLAと比べると印刷の難易度はやや高めですが、強度や加工性を求める場合はABSがおすすめです。
» 環境省「<脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業>」(外部サイト)
その他の素材
PLAやABS以外に使用される主な素材は、以下のとおりです。
- PETG
- TPU
- ナイロン
- PC(ポリカーボネート)
- カーボンファイバー強化フィラメント
PETGはPLAよりも丈夫で、ABSよりも扱いやすい、強度と扱いやすさのバランスが取れた素材です。TPUにはゴムのような柔軟性があり、スマホケースの製作に適しています。ナイロンは摩耗に強く、ギアなどの部品に使われる素材です。PC(ポリカーボネート)は高い強度と耐熱性があるため工業用の部品に使用されます。
レジンは光を当てると固まる液体です。木質フィラメントには木粉が含まれ、本物の木の質感が再現されています。カーボンファイバー強化フィラメントは、軽量かつ高強度なため業務用部品などを作成するときにおすすめです。
3Dプリンターの活用例
3Dプリンターの活用例は、以下のとおりです。
- プロトタイプの作成
- 日用品の製作
- 教育現場での活用
プロトタイプの作成
3Dプリンターは、プロトタイプ(試作品)の作成に役立ちます。従来は業者への依頼や手作業で作成していましたが、3Dプリンターを使うと安価かつ短時間でプロトタイプを作成できます。デザイン変更や改善がしやすい点も、3Dプリンターでプロトタイプを作成するメリットです。
3Dプリンターでプロトタイプを作成すると、開発コストの削減や開発スピードの向上に役立ちます。
日用品の製作
3Dプリンターは身の回りで使うアイテムや、オリジナルグッズの製作に役立ちます。3Dプリンターを活用すると以下の用品を手軽に作れます。
- スマホスタンド
- ケーブル整理グッズ
- 収納の仕切り
- DIY用パーツ
- オリジナル雑貨
- 棚を取り付けるためのフック
- 棚受け
- ドアストッパー
壊れてしまった部品を自作すれば、新たに購入する手間やコストを抑えることができます。
教育現場での活用
3Dプリンターは、教育現場で子どもたちの学びを深めるツールとして活用できます。教科書だけでは得られない「考えて形にする体験」を通じて、子どもたちの考える力や創造力の育成につながります。理科や技術の授業で3Dプリンターを使用すると、設計や試作、評価の一連の流れを学ぶことが可能です。
3Dプリンターでは、授業で使う実験道具を準備したり、歴史的建造物の模型を作ったりできます。特別な支援が必要な子どもに対しては、手で触れて学べる教材や補助具を3Dプリンターで作成し、学びをサポートできます。
» 文部科学省「デジタルものづくりと技術教育」(外部サイト)
3Dプリンターの使い方に関するよくある質問
3Dプリンターの使い方に関するよくある質問は、以下のとおりです。
- 3Dプリンターによる騒音の対処方法は?
- 3Dプリンターの造形にかかる時間はどれくらい?
- 3Dプリンターの造形に失敗する原因と対策は?
3Dプリンターによる騒音の対処方法は?
3Dプリンターの騒音は、振動吸収マットを敷いたり防音ボックスで囲ったりすると騒音が軽減されます。3Dプリンターの動作音が気になる場合は、モーターの軸やレールに定期的にグリスアップすると、動作音が軽減されます。
3Dプリンターの冷却ファンやモーター部品を静音タイプに交換したり、印刷スピードを調整したりすることも効果的です。複数の方法を組み合わせて、3Dプリンターの騒音を最小限に抑えましょう。
3Dプリンターの造形にかかる時間はどれくらい?
3Dプリンターの造形にかかる時間はサイズや形状、プリンターの設定によって異なります。小さなキーホルダーなら数十分~1時間程度、手のひらサイズのフィギュアなら数時間が目安です。
3Dプリンターで印刷するときの積層ピッチを薄く設定するときれいに仕上がりますが、完成までの時間は長くなります。造形の密度を高くして丈夫に作る場合も、印刷の時間が長くなります。
3Dプリンターの造形に失敗する原因と対策は?
3Dプリンターの造形に失敗する原因は、プリンター本体の設定や造形材料の状態、設計データ、周囲の環境などさまざまです。一層目の接着不良は、3Dプリンターの印刷台とノズルの距離の調整や台の掃除、接着剤の使用で改善できます。
造形物が反ったり印刷台からはがれたりするときは、3Dプリンターの印刷台の温度を見直してください。造形物の底にラフトやブリムをつけると、3Dプリンターの印刷台からはがれにくくなります。細い糸が引いてしまう現象は、3Dプリンターの造形材料をノズルから引き戻すリトラクションを調整してください。
3Dプリンターのノズルの温度や移動速度も確認しましょう。
まとめ
3Dプリンターを活用するためには、パソコンや3Dデザインソフト、スライサーソフトなどの準備が必要です。3Dプリンターで使われる素材にはPLAやABSなど複数の種類があるため、作りたい作品に合わせて選びましょう。日用品の製作にも使用でき、3Dプリンターは初心者でも気軽に始められます。
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本コラムは外部執筆者が執筆した記事をサンステラで確認し掲載したものです。
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